2022年07月22日

No.1355 有事型買収防衛策を発動した会社に聞きたいことが1つあります

それは「なんで平時型買収防衛策を今導入しておかないの?」です。

有事型買収防衛策の発動実務ってものすごく大変だったでしょう?突然、敵対的TOBを実施され、留保の意見表明の作成、質問権の行使、反対意見表明の作成、有事型買収防衛策のプレスリリース作成、臨時株主総会の基準日設定、招集通知議案の作成、開催手続き、総会検査役の選任、臨時株主総会の開催、投票実務。そして対抗措置発動の実務・・・すんごい大変でしたよね。

知ってますよ。私にも経験があります。ちなみに皆さんは正確に言うと発動実務の経験はないです。なぜなら発動議案を可決はしたものの、その後買収者が買収提案を撤回した結果、皆さんは実際には発動しなかったからです。

私は発動議案可決後、実際の発動実務も経験しました。申し訳ないのですが、発動議案を可決させるまでの手間の1億万倍くらい大変です。まあ、あのときは株券電子化前における発動実務なので、今は変わったのでしょう。もう発動実務をしたくはありませんが。

で、皆さんは発動まではしていないものの、発動議案を可決させるまではやったんですよ。どうでしたか?大変だったでしょう?もう二度とやりたくないでしょう?

なのにどうして皆さんは平時型買収防衛策を導入しないのでしょうか?私、ホントに不思議なんですよ。有事型買収防衛策というのは、有事になってから導入し、発動を株主総会にはかるものです。つまり、有事になることは許容するということですよ。もう1回、有事を経験したいのですか?一方の平時型買収防衛策は、なるべく有事にならないように平時から導入しておくものです。もちろん買収提案をされれば有事になることは避けられませんが、ある程度の抑止効果はあります。あれだけ大変な有事を経験したのですから、二度と会社を有事にはしたくないと考え、平時型を導入しておこうと行動しそうなもんですがね。

もう二度と旧村上ファンドは貴社株式を買わないのですか?アスリードは貴社にもう二度とやってこないのですか?旧村上ファンドやアスリード以外のアクティビストは貴社をターゲットにしないのですか?「もうアイツらはやってこないよ」と考えているのなら、ではその根拠は?島忠なんて旧村上ファンドに2度も投資されてましたよ。最近ですけど、旧村上ファンドに買われたホシデンは、旧村上ファンドが出て行ったと思ったらまた舞い戻ってきましたよ。

ではどうして有事型を発動した会社は平時型を導入しないのか?たぶん、平時型を導入しようとしても否決される可能性が高いから、と考えているのではないでしょうか。まあ、そういう会社もあるかもしれませんが、でも、有事型の発動議案を可決させた会社なんでしょ?だったら、ちゃんと説明して平時型にも賛成してもらえばいいじゃないですか?有事に突然買収防衛策を導入するよりも、平時から導入しておいたほうがよい、と。平時型はなにも、どんな買収提案にも網をかけて、やたらめったら買収防衛策を発動するような仕組みではないのですから。

有事型を発動するためにかけた労力の1/100、いや、1/10000で平時型を可決できると思いますけど。ちなみに、有事型を発動させた経験って、あんまり社内に根付かないと思いますよ。もうすぐ皆さん、有事型を発動させたことを忘れます。そして忘れたころにアクティビストはやってくるのです。平時から企業防衛投資をしておかないと、敵対的買収対策は根付かないですよ。

 

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