2026年01月30日

No.2249 (無料コラム)豊田自動織機はやっぱり非公開化すべきではなかった

以下、昨年のデイリー新潮で取り上げていただいた記事です。

「豊田自動織機の非公開化に大義はあるか」 企業防衛のプロが明かす、上場廃止で“本当に得をする人”の正体 2025/8/20

https://www.dailyshincho.jp/article/2025/08201100/

「長期的な視点にたった経営をするため」「抜本的な経営改革をするため」

 会社によって多少の差異はあれども、非公開化の理由として挙げられるのはどこの会社も同じような内容です。

 そもそも長期的な視点にたった経営や抜本的な経営改革というのは非公開化をしないとできないのでしょうか?

 私が知る限り、短期的視点で今日明日の利益しか考えずに経営している上場会社など皆無であり、すべての上場会社が長期的視点に立った経営をしているはずです。非公開化しないと長期的視点にたった経営や抜本的経営改革ができないのであれば、上場会社はすべて非公開化したほうがよいという話になってしまいます。トヨタグループにいたっては豊田自動織機だけではなく、むしろグループの中核であり最も長期的視点にたった経営が必要なトヨタ自動車こそが非公開化すべきではないか、ということになってしまいます。

よく「上場している意味がないから非公開化しろ」という人がいますが、上場している意味とは?資金調達?M&A?いや、ほかにもたくさんあります。例えば信用力、知名度などなど。極端な話、「上場の意味?単に上場したいから上場しているだけ」という理由もあれば「会社設立時にうちのオヤジに出資してもらったんだけど、四季報にオヤジの名前を載せてあげたくね」という理由だってあるでしょう。なんだっていいんですよ。「会社を設立したんだから、やっぱ上場会社にしたいよね!」でもOKでしょう。

そして上場廃止にしたって、「もう上場しているのに疲れた。アクティビストやら敵対的買収やら。いろんなコストに見合わない。もうやめよう」という理由でもいいんですよ。というか上場を廃止する理由って、それくらいしかないでしょ?あ、あと相続税対策ね笑。

一方の豊田自動織機の上場廃止、非公開化の理由は「長期的視点での経営を実現し企業価値を向上させるため」というものです。上記の記事でも書いた通り、長期的な視点での経営は上場したままできますし、多くの会社がそうしています。三菱UFG、日立製作所、ファーストリテイリング、東京エレクトロン、 三菱商事、三菱重工業・・・いずれも時価総額の大きな企業ですが、今日明日の利益を考えて経営していますか?していません。みんな「中長期的な利益、企業価値を向上させること」を目的に経営しているでしょう。トヨタ自動車だってそうでしょう。

私は、トヨタ自動車、豊田自動織機は世の中の様々な意見、指摘、批判に惑わされてしまい、今回の非公開化を選択してしまったのではないか?とずーっと心配していました。惑わされた結果「非公開化がすべてのステークホルダーにとってよいことだ」と判断したのでしょう。すべてのステークホルダーの利益を思って、の判断だったのでしょう。

トヨタ自動車、豊田自動織機は一度ここで立ち止まってみてはどうでしょうか?株主のためでもあると思っていた非公開化、もしかしたら一部の株主にやれと言われてやった非公開化に対して、当の株主が「TOBに応募するな!」と言っています。

https://elliottletters.com/wp-content/uploads/Elliotts-Perpectives-on-Toyota-Industries-JP.pdf

株主のためでもある、よかれと思ってやったのに、応募するな、と言われています。これまでつけたことない価格である16,300円を提示したら、日経のリークのせいで市場株価を下回ってしまい「ディスカウントTOBだ!」と言われてしまいました。ただただばくち打ちが失敗しただけなのに。そして今度は「じゃあ18,800円にします」と言ったら、今度は「TOBに応募するな!」です(もちろんエリオットの言いたいことはわかりますが)。

もう一度、豊田自動織機が非公開化する意味は?を考えてみてはどうでしょうか?せっかくエリオットがくれたチャンスです。トヨタ自動車、豊田自動織機、ひいてはトヨタグループ全体が「本当に非公開化をする必要があるのか?」「トヨタグループのあるべき姿」「グループの資本構成・株主政策」をゼロベースで再検討してはどうでしょうか?

それでも非公開化が必要だとお考えになる場合、今の延長線上で戦っても負ける可能性があります。もちろん株主構成上、安定株主比率の高さのおかげで勝てるのかもしれませんがまだわかりません。エリオットは安定株主比率が高くてもいけると思って仕掛けてきたのですから。

トヨタグループだけではなく、日本の上場会社は今大変な時代を迎えています。この時代をどうやって乗り越えるのか?乗り越える方法は非公開化なのか?もっと違う方法があるのではないか?そういったことをきちんと考えなくてはいけません。

会社は誰のものか?この問いに対してきちんとした答えを持っている経営者は意外と少ないのです。

ちなみに豊田自動織機が今のTOB価格で非公開化をする方法はあります。もちろん絶対い成功すると言えるわけではありませんし、少々奇策に見えるかもしれませんが、ある意味王道です。さきほど申し上げた通り、今の延長線上で考えてもこの策は出てこないはずです。

 

このコラムのカテゴリ

関連する
他のコラムも読む

以下の通り、八十二銀行が株主提案をされたそうです。

続きを読む

ミリ・キャピタルが乾汽船の変更報告書を提出しました。大量保有報告書を提出したのが2025年8月13日で、その後、8月21日、8月28日と立て続けに変更報告書を提出しました。

続きを読む

ありあけキャピタルが百五銀行の大量保有報告書を提出しました。私の地元、三重県の銀行です。同級生もけっこういるような・・・これ、上場会社の皆さんはよく見ておいた方がよいです。なぜなら・・・

続きを読む

カテゴリからコラムを探す

月別アーカイブ