2024年11月27日

No.1912 (無料コラム)だからダイドーリミテッドの件は失敗だったのでは?と思うのですよ

ストラテジックキャピタル(SC)の丸木さんが日本製鉄に書簡を送ったと公表しました。以下の書簡ですが、私にとっては違和感があるところが少しあります。また、後ほど申し上げますが、丸木さんがダイドーリミテッドで失った投資家からの信用は、上場子会社を攻めるときに痛手になると私は思っております。

まず書簡。

https://stracap.jp/wp2/wp-content/uploads/2024/11/6ee37d63aa4a2aad4230e8667fe0e572.pdf

SCが今年6月総会で行った大阪製鉄に対する株主提案について、日本製鉄の議決権(256,290個、所有割合65.85%)を反対個数から除くと50%以上の賛成を得ていることになるぞ!と主張しています。??? SCの分は除かないの?

大阪製鉄の株主総会における株主提案の賛成率は以下の通りです。

第8号議案の賛成個数52,236個、反対個数307,716個です。反対個数から日本製鉄の議決権256,290個を除くと51,426個と賛成個数の方が多くなりますね。でもSCの議決権はおおよそ25,485個なので、公平に比較するならこれを賛成個数から除く必要があるのでは?となると賛成個数は26,751個です。

有事型買収防衛策をMoMで発動する場合、買収者の議決権だけではなく取締役の議決権も除いて決議をしますよね?だから比較するなら日本製鉄の議決権だけ除くのではなく、提案者であるSCの議決権も除く必要があるのでは???

それと書簡の以下。SCは日本製鉄の議決権を300個保有していると言っています。30,000株保有する株主です。

そしてSCは以下の通り日本製鉄のIR室とは面談できたものの、取締役との面談が実現できていないから再考しろと言っています。

SCは日本製鉄の株主ではあるものの、30,000株しか持っていません。日本製鉄は時価総額が3兆円を超える大企業です。そして株主数は50万人を超えています。そのような日本製鉄の取締役に対して、30,000株しか持っていない株主が「面談しろ!」と大声で主張しています。会わんでしょ?30,000株しか持っていない株主の面談に対応していたら、キリがありません。IR室ですら本来会わないのでは?IR室が会ってくれただけでもありがたいと思った方がよろしい。

私は以前のコラムで以下のように書きました。

No.1819 ダイドーリミテッドの取締役が辞任した理由と今後の悪影響について

https://ib-consulting.jp/column/5248/

今回の丸木さんの行動はアクティビストとして儲けるという短期的目線では目的を達成した一方、投資先に攻め込まれる隙を与えてしまった可能性やこれからの株主提案に支障を与える可能性、そのほかさまざまなことを考えると本当によかったのかな?と私は考えます。

アクティビストがターゲット企業を攻める際のパワーの根源はなんでしょうか?それは2つあります。1つは議決権というパワーです。村上さんがよくやりますが、大量の株式・議決権を確保して、そのパワーを背景にターゲット企業に変革を迫る。もう1つは他の投資家や世論の後押しというパワーです。資金力がさほどないアクティビストは大量の株式・議決権を確保できませんから、他の投資家や世論に自身の主張の正当性を訴えて、協力してもらうことでパワーを得ます。

安定株主比率が低い会社はアクティビスト単独で攻め落とすことが可能です。資金力さえあれば大量の議決権を確保できますから、そのパワーを使ってターゲット企業に圧力をかけ言うことを聞かせることができます。しかし安定化主比率が高い企業は、アクティビストに資金力があっても確保できる議決権に限りがありますから、議決権のパワーには限界があるのです。だからこそ安定株主比率の高い会社を攻めるときは、アクティビストの議決権に加えて、世論や投資家のパワーの後押しが必要になります。

大阪製鉄という日本製鉄が議決権の60%以上を所有する会社を攻めるときは特に必要なのです。だって丸木さんがいくら議決権を取ろうにも、取れても最大で34%だし、現実的にはそんなに取れません。だから「SCの丸木さんの主張はもっともだ!大阪製鉄の経営者は耳を傾けろ!」「日本製鉄は大阪製鉄を完全子会社化すべきだ!」と言ってくれる世論や投資家が必要なのです。

で、丸木さん、ダイドーリミテッドの一件で世論や投資家はSCを後押ししてくれますかね???世論や投資家の後押しのないSCは、日本製鉄と大阪製鉄にとって怖くない存在、かもしれません。

丸木さんがいくら日本製鉄と大阪製鉄に「完全子会社化しろ!」と言っても、議決権の65%を有する日本製鉄に無視されたら終わりなのです。日本製鉄に無視をさせないようにするためには、世論や他の投資家を動かさないとダメです。日本製鉄に「無視できないな」と思わせて行動させないとダメということです。

ダイドーリミテッドの件でものすごく批判されたSC丸木さんの言うことを、世論や投資家は聞いてくれますかね?ということです。

 

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