No.1819 ダイドーリミテッドの取締役が辞任した理由と今後の悪影響について
ストラテジックキャピタル(SC)が株主提案をし、3名の取締役を派遣したダイドーリミテッドが大規模株主還元の実施を公表し株価が急騰、出来高が急増した結果、SCは市場で保有株のすべてを売却しました。詳細は以下のコラムで書いた通りです。ついでに旧村上ファンドも同日、保有株のすべてを売却しました。
https://ib-consulting.jp/column/5246/
また以下のコラムでも書いた通り、ダイドーリミテッドはSCと協議し、SCの候補者を取締役会の過半にしてしまえば、こんな会社を疲弊させてしまうおそれのある大規模株主還元などには至らなかったのではないかと思われます。
https://ib-consulting.jp/column/5247/
今回はSC特集コラム無料版の最終回です。みなさんけっこう疑問に思っているのではないでしょうか?「なんでSCが送りこんだ取締役の1人が辞任したのだろうか?」と。まあ、抗議の辞任、これから本業の立て直しができなくなりそうだから辞任(還元にお金を使われてしまうから)といろいろと想像はできるのですが、私は当社のお客様からのご指摘を踏まえて以下の通り想像しました。
まず、時系列をまとめます。
6月27日(木) ダイドーリミテッド株主総会終了。以下の結果。
https://www.daidoh-limited.com/pdf/2024/20240627_02.pdf

7月4日(木) 18:40 大規模株主還元を公表
7月5日(金) 大規模株主還元に関する記者会見。山田会長は取締役会が一枚岩であることを強調。株主提案から取締役執行役員に選ばれた中山俊彦氏(元ブルックスCFO)は「再建に向けて大切なのは現場主義。8人の取締役と現場の人と一緒に戦っていきたい」と話した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/8c427628584743492a72ae226e3bece7cb2a6123
※しかしSCは7月5日(金)時点で保有株のすべてを売却(変更報告書の提出は7月12日(金)15:16)。ダイドーリミテッドの取締役会がこの時点でSCの売却を把握していたのかどうかは不明(たぶん知らない?知ってたら中山氏はこんなこと言わない?)。
7月8日(月) SCが「ダイドーの大規模株主還元についてはSCが提案したものでも事前に同意したものでもない」と公表。

7月10日(水) 16:00 中山取締役(SC側候補者、元ブルックスCFO)の辞任(7月9日付)を公表。

7月12日(金) 15:16にSCが変更報告書提出。保有株数ゼロに。16:02に旧村上ファンドも変更報告書提出。保有株数ゼロに。

時系列はこんな感じです。当然ですが、SCは今回の大規模株主還元の検討・実施に何ら関与していませんから、公表内容を見て売却を決断したのでしょう。ダイドーリミテッドの大規模株主還元に関する公表資料を見ると以下のように書いてあります。

ダイドーリミテッドの取締役会、いや、すくなくとも辞任した中山取締役については「そうは言ってもSCは株を売らない」と思っていたんじゃないでしょうかね?議決権で32%とかなり大量ですし、何より本業の立て直しの必要性を訴えて取締役候補者を株主提案したのですから「いくらなんでも売却してExitすることはないだろう」と思っていたのでは?たぶんですが、この大規模株主還元は旧村上ファンド対策だったんじゃないかな?旧村上ファンドが株式を売却することを期待していたけど、丸木さんまで出ていくとは思わなかったと(少なくとも丸木さんが派遣した3人・・・いや、中山さんは)
では中山氏の経歴をご覧ください。中山氏はもともとブルックスブラザーズでCFOをやっていました。

以下をご覧ください。これはダイドーリミテッドの招集通知に記載しているダイドーリミテッドの反対意見です。取締役候補者の中山氏が業務執行取締役になることが想定されているが「役職員から中山氏が復帰することに対して強い反対意見」「選任されたら相当数の役職員が離散するおそれ」という点を主張しています。
https://www.daidoh-limited.com/ir/pdf/meeting/meeting101_01.pdf

大変失礼ながら、もともとブルックスのCFOだった中山氏は社員の方から好かれていなかったんですね・・・。これとSCの株式売却が辞任の理由じゃないでしょうか?
つまり
・中山氏はダイドーリミテッドの社員から好かれていないことはわかっていた。
・しかし32%の議決権を持つSCがバックにいるから「議決権・人事権というパワーで社内を掌握できる」と考えていた。
・でもその力の源であるSCが株式を売却したことを把握した。
・これでは誰もオレの言うことを聞くやつなんていない。まともに経営や業務執行なんてできない。
と考えて取締役を辞任した、ということではないでしょうか?中山氏がどうやってSCの株式売却を把握したのかはわかりません。7月4日(木)に還元を発表、5日に記者会見をし、山田会長は「取締役会が一枚岩である」と強調、中山氏は「再建に向けて大切なのは現場主義。8人の取締役と現場の人と一緒に戦っていきたい」と話しているそうです。5日(金)の時点ではやる気があったんですよ。でも9日(火)には辞任を申し出ています。まあ想像にすぎませんが、5日(金)の出来高が非常に大きかったことから、土日や月曜あたりにSC丸木さんに確認したんですかね。「まさか売ってませんよね?」と。もしかしたら丸木さんに「いや、株価がかなり高くなったので売却しました」と答えられたのでは?
後ろ盾を失い、ダイドーリミテッドの社員からは好かれていないかもしれない中山氏は、社外取締役ならまだしも、業務執行をする取締役としてやっていくのはしんどいと思ったでしょう。そりゃ部下がついてこない状況ではきついですよ。SCの議決権というパワーがあればまだしも。
これ、確かに丸木さんはアクティビストとして大儲けしたわけですが、この一連の経緯は重たくないでしょうか?丸木さんがこれから取締役選任の株主提案を投資先にする際、候補者になってくれる人、いますかね?この一連の経緯は今回みんなが知ることになりました。いろんな人が「なんでやる気満々だった取締役が突然辞任したの?」「丸木さんが株を売ったことに対する抗議の辞任か?」「いや還元に金を使って本業立て直しの資金がなくなるからじゃないか?」などなどといろんな想像をしています。
丸木さんが株主提案をする際「候補者になってくれませんか?」とお願いしに行ったらその候補者はどう思うでしょうか?「丸木さんって、ダイドーリミテッドに本業立て直しを謳って取締役選任の株主提案をしたのに、すぐに株を売却した人だよな?この人の株主提案に関わって大丈夫かな?はしごを外されるんじゃないか?」と思うのではないでしょうか?
今回の丸木さんの行動はアクティビストとして儲けるという短期的目線では目的を達成した一方、投資先に攻め込まれる隙を与えてしまった可能性やこれからの株主提案に支障を与える可能性、そのほかさまざまなことを考えると本当によかったのかな?と私は考えます。
無論、丸木さんがダイドーリミテッドに大規模株主還元を今しろと交渉したわけではなく、丸木さんにも忸怩たる思いがあるのかもしれません。だからわざわざプレスを出して「うちがやらせたわけじゃない」と主張したのかもしれません。しかしそうであればダイドーリミテッドに「こんな大規模株主還元はやめろ」と強く進言することもできたのではないでしょうか?
今回の行動がストラテジックキャピタルの今後のアクティビズムにどういう影響が出るのか強い関心をもって見ていきたいと思っています。
