No.1809 同意なき買収の歴史
以下、日経ビジネス記事です。非常に興味深いのでコラムにします。ちょっとだけ抜粋します。
「同意なき買収」の20年史 王子製紙がたたいた扉が今開く
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00653/070100003/?n_cid=nbpnb_mled_pre
王子製紙は、「国際的な競争に不可欠な大規模投資を行い得る体制を築く」と買収の大義を訴えた。対する北越製紙は三菱商事への第三者割当増資を駆使して抵抗し、激しい争いとなった。王子製紙を支援した野村証券は、法人営業を担当する自社社員に、「王子製紙だけの利益を求めているのではなく、製紙業界の発展につながる買収だ」と法人顧客に説明して回るように指示したという。
当時を知る野村証券の元社員は、「それだけ敵対的買収に踏み切るということは、重たい意味を持っていた」と振り返る。最終的に、王子製紙は撤退したが、それでも業界大手が「野蛮」とされた敵対的買収に踏み切ったことは、国内外に衝撃を与えた。
私もこの元社員の方と同様、当時のことをよく覚えています。
最近、同意なき買収(私は「敵対的買収」と言います)を実施した会社で「オレが同意なき買収の扉を開いた!」的な、あたかも日本で初の敵対的TOBを実施したかのようにおっしゃる方がいますが、全然違います。はっきり言って最近の敵対的買収なんて、経済産業省が「企業買収における行動指針」を制定してちゃんとお膳立てしてくれた上でのことでしょう?
「指針があるから真摯に検討しろーーー!」って金科玉条のごとく言ってますけど、王子製紙が敵対的買収を北越製紙に仕掛けた際はそんな指針などありませんでした。当時敵対的買収を仕掛けたのは、村上ファンドとかスティール・パートナーズといったアクティビストで、上場会社による敵対的買収もあったものの数は少なかったです(ドン・キホーテとか夢真とか)。特に伝統のある、時価総額の大きい上場会社による敵対的買収など皆無でした。
そんな中で、渋沢栄一が設立に関与した王子製紙という歴史と伝統のある上場会社が敵対的買収を経営戦略として実施することがどれだけ重たかったか?
敵対的買収ってそれくらい実は重たいんですよ。対象会社は絶対に反対します。そりゃそうですよ。北越製紙にとっては業界No.1だけど、ライバル企業でもある会社に「うちの子会社になれ」って言われているんですから、そりゃ腹も立つでしょうし、感情的になるでしょう。プライドが許さないでしょう。株主利益とは別の話です。経営者、従業員も人間ですから。
最近の事例をみていると、永守さんはけっこう時間をかけてじっくりと考えたうえで敵対的買収を実施したように見えますが、ほかはどうなんでしょうね。けっこうフランクに「指針があるんだからやればいいんじゃないの?」といとも簡単に踏み切った会社もあるように思います。なんという愚かな経営判断かと思います。同意なき買収というふうに表現が変わりましたが、やはり敵対的買収だし乗っ取りなんですよ。そこを理解せずにやっちゃうと痛い目を見ます。
ちなみに王子製紙は当時、それほど批判はされていないんですよ。もちろん批判もありましたがそれは「王子製紙には泥臭さが足りなかったんじゃないの?」とか「三菱商事への第三者割当増資に発行差止請求をすべきだったんじゃないの?」といった批判です。敵対的買収そのものへの批判は、日経の産業面くらいでした笑 それには理由がありますから。https://ib-consulting.jp/column/5213/
それと守る側ですが、やはり王子製紙が北越製紙に敵対的買収を仕掛けた時代とはかなり変わっています。あの頃も当然、感情的な防衛に対しては批判的でしたが、今はさらにです。指針もあるので感情的な理由だけで反対するのはもうムリです。ていうか、私は20年前から感情的な反対意見をアドバイスしたことなどありません。株主に対する理屈をきちんと作らないと、それはTOBに対する反対意見にはなりませんから。
今一度、上場会社は強烈な敵対的買収時代を迎えるに当たって、今何をしなくてはならないかをよく考える必要があります。そしててきた敵対的買収を検討する会社も同様です。敵対的買収という行為は相手のプライドをズタズタにする行為です。株主に対してお金を払ってその会社を乗っ取る行為です。対象会社は必死に抵抗します。「それでもあの会社がわが社の企業価値向上には必要なんだ。わが社の企業価値向上が業界のためにもなるし、日本経済のためにもなるんだ!」という強い気持ちと覚悟がないと成功しません。
