2024年05月01日

No.1753 メルカリに対する提案について~勧告的決議でやるという考えもあり~

以下をご覧ください。

https://mercari-reboot.com/

ZOZOの執行役員などをつとめた田端 信太郎氏が以下の通り「山田CEOおよびメルカリ経営陣への提案」をしています。抜粋します。

ちなみに田端氏は「この4月中旬に3万株購入したため、2024年9月28日に開催予定の株主総会では、6ヶ月継続保有の要件を満たさず、株主提案はできません。本提案と株価回復が実現しないのであれば今後、2025年9月の総会での株主提案も視野に入れて状況を注視します」とあるとおり、株主提案権はまだ有していないそうです。

私が本件を取り上げた理由は、

①今後、個人投資家のこういった株主提案、経営改善要求が増える可能性があるため

②個人投資家の属性、影響力次第では、アクティビストとの共闘もあり得、上場会社にとっては脅威であるため

③6カ月の継続保有要件を満たしていないが、提案の趣旨・狙い・効果を考えると「勝手株主提案」をしてもよいのではないか?と考えたため

などなどです。これまで個人投資家による株主提案というのは毎年ありました。有名なのは以下です。野菜ホールディングスです。

https://toyokeizai.net/articles/-/9295

これはちょっと特殊なケースかもしれませんが、個人投資家が株主提案をしてもあまり影響度はないし、会社も重要視はしないし、そして大した賛成率も得られないというのが現実かもしれません(中にはそこそこ取る議案もありますが)。

しかしこのようなSNSのフォロワー数も多い影響力のある個人投資家が株主提案をしたらどうでしょう?以下、メルカリの株主構成です。

こういう会社によくある株主構成ですね。安定株主は山田CEOと共同創業者?の富島氏くらいですね。しかしだからと言って、メルカリに株主提案をしてもすんなりと可決できるわけではありません。国内機関投資家は基本的に現経営陣を支持する傾向がありますし、個人株主は議決権を行使しないか、白票で投じる(=会社議案に賛成、株主提案に反対)可能性が高いからです。否決される可能性のほうが高いでしょう。

しかしこういう動きも、株主の世代交代によって変化していく可能性があります。現状、ツイッターのようなSNSが株主提案や敵対的・同意なき買収の局面において効果的な働きをしたケースを私は知りません。むしろ有事型買収防衛策を東芝機械(現芝浦機械)が発動した際、ツイッターなどでは否定的な見解を多く見たものの、現実的には発動議案が可決されました。結局のところ、機関投資家が有する議決権のパワーは圧倒的なのです。

しかし時代は変わります。もちろんすぐに変わるわけではありませんが、個人株主の議決権行使率もいつか上がる可能性があります。そして日本における個人株主の重要性に気づいたアクティビストが個人に影響力のあるインフルエンサーと組んで株主提案を仕掛ける可能性もあるかもしれません。なので私は今回の田端氏の行動を非常に高い関心をもって注視しています。

定時株主総会での株主提案権を有していないものの、このような活動がメルカリ山田CEOの役員選任議案の賛成率にどれくらい影響を与えるのか?ちなみに昨年の山田CEOの賛成率は以下の通り98.07%です。もちろん現時点で田端氏は山田CEOの選任議案に反対するよう呼び掛けている訳ではないので、賛成率には影響がないかもしれません。

そして私が田端氏の提案を取り上げた理由の3つ目である「6カ月の継続保有要件を満たしていないが、提案の趣旨・狙い・効果を考えると「勝手株主提案」をしてもよいのではないか?」という点です。以下、再掲しますが、田端氏の提案です。田端氏はメルカリ株を3万株=300個の議決権を有しているものの、4月に取得したためメルカリの定時株主総会の基準日である6月末時点で6カ月の継続保有要件を満たしていないため、株主提案権を有していないとおっしゃっています。

US事業からの撤退

配当性向30%での配当開始

株主総会のハイブリット開催への変更

しかし、この3つの提案、株主提案になりますか?配当性向30%というのはなると思います。なおやるとしたら「配当●●円」という形で会社提案への対抗提案という形にするのではなく「会社提案の配当●●円に●●円を追加する」という形にしたほうがよいです。なぜなら対抗提案にしてしまうと、例えば株主が会社・株主提案の配当、どちらにも〇をつけると「どちらの提案に賛成なのかわからない」として無効票になる可能性があります。なので「会社提案の配当に追加する」という形をとったほうがよいです。

そして、US事業からの撤退と株主総会のハイブリッド開催ですが、これは株主提案になるでしょうか?少なくともUS事業からの撤退は株主提案にはなりません。工夫すればわかりませんが、このまま出したらメルカリは「会社法、定款に定める議案ではないので株主提案として取り扱わない」とするでしょう。総会のハイブリッド開催も同様ですね。ただ、これは定款変更の形で株主提案をすれば取り扱わざるを得ないかもしれません。

これ、たしかに株主提案をするための6カ月の継続保有要件を満たしていないのですが、勧告的決議の方法で株主提案をしちゃったらどうなのかな?と考えます。勧告的決議の株主提案はパリサーが京成電鉄に対して行いました。まあ、京成電鉄は取り扱いませんでしたから、当然メルカリだって理由も明かさずに取り扱わない可能性が高いと思われます。そもそも株主提案の資格がなく株主提案の要件を満たしていないのだからだから理由を明かす必要もない、と。

一方で田端氏の目的が株主提案を通すことではなく、経営陣や社外取締役に問題意識を持ってもらい、US事業や配当のこと、総会ハイブリッド開催を真剣に検討してもらいたいということなのであれば、ツイッターやメディアで訴えることに加えて、法律上の株主提案ではないけど「勧告的決議」という形で株主提案することも検討の余地はあるのではないかと考えます。

勧告的決議の株主提案って、今後話題になる可能性が高いと私は見ています。当然、会社は取り扱わないんですけど、問題提起はできるんですよ。マスコミが取り上げる可能性もありますし。そもそも株主提案権を確保したところで、株主提案にならない、もしくは株主提案にしようとしたら定款変更にせざるを得ないのなら、蹴られることは前提の上で勧告的決議の形で提案しちゃってもいいんじゃないかと考えます。

勧告的決議の株主提案は株主提案にならないので取り扱われないかもしれないけど、一応、取締役会に「こういう提案が来ています」という報告くらいはなされるかもしれません。マスコミが勧告的決議の株主提案を話題として取り上げ始めたら、社外取締役も「資格要件がないから株主総会で取り上げる必要はないが、議論はしておいたほうがいいんじゃないか?」と言う可能性があったり、株主総会想定Q&Aで勧告的決議の議案を取り上げなかった理由などを準備したりするかもしれません。

まあちょっと突飛で奇抜な考え方ではありますが、ご参考まで。こういうのを考えるのが仕事なもんで。

 

 

 

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