No.1452 旧村上ファンドが地銀5行の株主に
以下、旧村上ファンドが地銀5行の大株主に登場したという記事です。私は「そんなにたくさんは買わないんじゃないの?」と推測します。以下、その理由です。
まず理由を書く前に、皆さんご存知かもしれませんが、旧村上ファンドが地銀の大量保有報告書を提出したわけではありません。大株主に登場しただけです。大株主に登場したかどうかを調べる方法ですが、以下でまとめています。この方法を使えば、気になる投資家がどこの大株主なのかを調べることができます。
https://ib-consulting.jp/newspaper/4626/
さて本題です。
https://www.nikkinonline.com/article/74411
旧村上ファンド系の投資会社、シティインデックスイレブンス(東京都)が複数の地方銀行で大株主となっていることが、2023年3月期の第2四半期報告書で明らかになった。判明しているのは秋田銀行、岩手銀行、武蔵野銀行、八十二銀行、スルガ銀行の5行。一方、22年3月末時点で大株主となっていた山梨中央銀行と滋賀銀行についてはシティ社の記載がなくなり、保有株式を売却したもよう。また、富山第一銀行では、著名個人投資家が大株主として急浮上。地域銀行関係者は大株主の動向に神経をとがらせている。
シティ社は22年9月末時点で、秋田銀株を24万5千株(持ち株比率は1.36%、9位)、岩手銀株を34万9400株(同2.01%、9位)、武蔵野銀株を63万3千株(同1.88%、9位)、八十二銀株を977万2千株(同2.02%、10位)、スルガ銀株を308万株(同1.63%、7位)保有。いずれの銀行も、22年3月末時点では大株主として記載がなかった。
以下、旧村上ファンドが投資している地銀の時価総額、株価、株主構成などです。山梨中央と滋賀銀行は2022/3期末の大株主の状況に登場しましたが、2022/9月末の大株主の状況からはいなくなったようです。全株なのか一部なのかはわかりませんが、売却したようです。
私がなぜ「旧村上ファンドが地銀株を大量に買うことはない」と考えるのかというと、まずは「銀行」だからです。20%以上の株式を買うときは金融庁の認可が必要なので、まあ金融庁にある程度守られています。新生銀行をSBIが買うときはOKしたのだと思いますが、相手が旧村上ファンドとなると話は別でしょう。金融庁が認可するとは思えませんし、村上さんも思っていないでしょう。だから旧村上ファンドは地銀株を20%以上買うつもりはないと思います。だから大量の株を取得して圧力をかけるといういつものシナリオが成り立ちません。
もう1つは地銀の安定株主比率です。スルガ銀行以外はまあまあ高いんですよ。30%以上ありますし、物言わぬ個人株主比率も高いです。なので旧村上ファンドが敵対的TOBを実施したり、市場で20%以上買い集めたりする場合は、金融庁の認可がハードルになりますし、株主提案をして何かしらの議案を可決させようにも、安定株主比率と個人株主比率がハードルになります。
なので旧村上ファンドは特定の地銀株を大量に買って圧力を加えるとか自己株TOBをさせるとかをやろうとしているわけではなく、幅広く地銀株に投資し、市場株価が上がれば売っていくのではないかと見ています。現に2022年3月末の大株主に登場した山梨中央銀行と滋賀銀行については、2022年9月末の大株主ではなくなったみたいですから。
期末や第2四半期末の大株主の状況に登場するくらいの株を買って、株価が上がったら次の第2四半期末や期末までの間に売っていくつもりではないかと考えます。
以下滋賀銀行の株価です。6月の有価証券報告書提出後に株価が急上昇していますね。
以下山梨中央銀行です。同じように急上昇しています。
村上さんのやってることって、もう、ねえ・・・・。
私が各地銀のアドバイザーだったら「放っておきましょう」とアドバイスします。ただ、他のアドバイザーはどうでしょうかねえ・・・。「このままだと村上に20%近く買われるリスクがありますよ!対抗策を打つべきです。その対抗策とは・・・他の地銀との経営統合しかありません!当社がフィナンシャル・アドバイザーになります!」って言いそうですね。
アドバイザーはよくよく吟味したほうがいいです。明日のコラムでまとめる予定のデジタルガレージもそんな感じだと思いますねえ。