2017年05月23日

No.92 富士通、ソレキアへのTOB失敗

「まだやってたの?」と思われるかもしれませんが、富士通によるカウンターTOBの期限は昨日5月22日まででした。富士通によるTOBは不成立に終わりました。結果は357,765株でしたので下限を満たしません。ちなみに佐々木ベジ氏の敵対的TOBの期限は本日5月23日までです。

 おさらいですが、富士通によるカウンターTOBの条件は、1株当たり5,000円ですべての株式を買うというものです。しかし、上記のとおり買付予定数の下限が付されているため、応募株数が445,924株に満たない場合は不成立です。簡単に言うと富士通は「5,000円で全部の株を買いますよ。ただし、結果、富士通と富士通に友好的なソレキアの経営陣らの持分が2/3以上にならない場合はTOB不成立です」という条件です。佐々木ベジ氏に1/3持たれた状態では関与したくない、ということでしょう。

 富士通のTOBへの応募は357,765株でしたので、下限に達せず不成立となりました。ちなみにソレキアの発行済株式総数は1,016,961株で、自己株式などを除いた議決権では847,200株です。富士通が既に保有するソレキア株式は23,558株、ソレキアの役員など富士通のTOBには応募しないけど富士通のTOBに賛成している人たちが保有するソレキア株式は108,997株です。

ソレキアの発行済株式総数

1,016,961株

自己株式

148,700株

単元未満株式

21,061株

完全議決権株式

847,200

富士通保有株式

23,558株

ソレキア経営陣・創業家

108,997株

富士通TOBへの応募株数

357,765株

ソレキアの安定株主

490,320

上表のとおり、富士通やソレキア経営陣ら、今回の値段の安い富士通TOBに応募した株主らはソレキアにとって友好的な株主、つまり、佐々木ベジ氏にある程度の株式を保有されたとしても、ソレキア経営陣を支持してくれる安定株主です。これが490,320株ですから、総議決権の57.9%となります。

逆に、847,200株から490,320株を引いた356,880株が佐々木ベジ氏のTOBに応募する可能性のある株数です。総議決権の42.1%です。ちなみに、佐々木ベジ氏のTOB条件は1株当たり5,450円で、成立条件として下限は付していないものの、最大で364,700株までしか買いませんよ、という内容です。しかし按分にならなさそうですね。ただ、佐々木ベジ氏に356,880株のすべてが応募される訳ではないでしょう。まあ、議決権ベースで見た場合1/3は超えるかもしれませんね。

ソレキアは今後どうするのでしょうか。「実質的な安定株主が半分以上いるんだから心配ないでしょ?」 そうでしょうか?ソレキアの経営陣が佐々木ベジ氏を無視し続けた経営をすることが可能でしょうか?創業家よりも多くの株式を保有する筆頭株主を無視できるでしょうか?

佐々木ベジ氏がそうはさせないでしょう。今後、いろんな経営に関する提案がなされます。それをソレキアはいちいち検討しなくてはなりません。提案だけならまだいいのですが、取締役会議事録の閲覧謄写請求、会計帳簿閲覧謄写請求、臨時株主総会の開催請求・・・法律上のいろんな株主権を行使されるかもしれません。また、場合によっては「代表訴訟!」ってなことにもなりかねません。かなり労力を使います。戦後処理を考えずにTOB合戦に突入してしまったのではないかと危惧しています。しかも負け戦の戦後処理です。

しかし、今回の富士通によるカウンターTOBは「おそまつ」の一言に尽きます。富士通のような大企業が5,000円までしか価格を引き上げられないなら、出てこない方がよかったのでしょう(もしかしたらいろんな事情があって「負ける前提でTOBをかけよう」と富士通が考えたのかもしれません。富士通OBから「助けてやれ」と言われたからしょうがなくTOBをかけたけど本当は子会社になんかしたくない、など。)。もちろん、5,000円までしか提示できないようなホワイトナイトを頼ってしまったソレキアに問題があることは言うまでもありませんが。

最後の最後に私も想像できないような大どんでん返しがあるのかと期待していましたが、何もありませんでした。私だったらソレキアを守るためには「増配」を選択させました。TOB価格が2,800円の段階で、です。3月中旬には決着させていたと思います。カウンターTOBではこの勝負は勝てませんから。佐々木ベジを侮り過ぎです。得体のしれない個人なのですから、「いったいいくらのお金を持っているのかわからんぞ」というスタンスで挑むべきでした。増配を選択する場合、経営陣が「佐々木ベジも利することになるじゃないか!」と感情的になったとしても説き伏せます。どれだけ説得しても納得してくれなければ、アドバイザーを迷うことなく降ります。当然、平時から信頼関係ができていないような先であればアドバイザーなどにはつけません。

ちなみに、私のコラムをご覧いただいている方はおわかりかと思いますが、カウンターTOBを仕掛けるのは2月中旬にはわかりました(富士通が出てきたのは予想外です。負け戦に飛び込むわけがないと思っていましたので)。私からすると、あれはバレバレです。ソレキアのケースは大変参考になるので今週辺りから特集します。

なお、今回の負け戦の責任は間違いなくフィナンシャルアドバイザーであるソレキアと富士通の主幹事にあります。それと、そんな主幹事を頼りにしてしまったソレキアのCFOです。双方の主幹事は大企業ですが、如何せん経験不足です。TOBで戦ったことや、ましてや勝ったことがないのでしょう。人数はいるかもしれませんが、質が足りません。

 

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